オンライン授業で大福帳を使う:運用のふり返りと改善

こちらの記事では、オンライン授業での大福帳を使用・運用方法を紹介しました。実際に一学期間(2021年度Sセメスター)運用してみてどうだったのか、学生の感想を紹介しながら、ふり返りたいと思います。またふり返りを受けての改善点についても紹介します。

学生の感想

授業の最終回に、受講した学生に対して大福帳について感想を尋ねました。学生に提示した質問は「この授業では、大福帳を使いました。大福帳を使った感想(メリット、デメリット、使い勝手など)を教えてください。」です。16名の学生から回答を得られました。得られた回答を内容ごとにカテゴリ化しました。一人の学生の記述に、二つ以上の内容が含まれる場合は、それぞれを別々のカテゴリに入れました。

以下では、どのような感想があったのかを紹介します。

ふり返りの機会

授業の内容を整理し、ふり返る機会になったという記述が6件見られました。たとえば、下記のような記述です。

  • 落ち着いて授業を振り返る助けになったかと思います.
  • 授業が終わったらそのままのような状態がなく、必ず1回振り返りをする機会があったのはすごく良かった。
  • 授業内容を整理することができて良かった。

このように、毎回の授業後に大福帳にコメントを記入することで、その日の授業の内容を整理する機会になっていたようです。大福帳を活用する目的の一つに、授業内容の理解と定着が挙げられます。授業内容を整理し、ふり返ることで深い理解に至れる可能性が、ほかの大福帳の実践と同様、今回の運用において示されました。

やり取りの一覧性

大福帳では、第1回から第13回の授業までの学生のコメントと教員からのコメントを一覧として見ることができます。この特徴について7件の記述が見られました。たとえば、下記のような記述です。

  • 手軽だし今までの自分の感想が一眼で見られるのでよかった。
  • 自分が各授業回で何を考えていたかをあとから見られて振り返りには適している。
  • 前回(あるいはもっと前)に何を学習したか、簡単に思い出すきっかけになるので、毎回のアンケートとそれに対するフィードバックよりも良いと思った。
  • 改めて大福帳を振り返ってみると、懐かしいなと思いつつ、学習の進歩が知ることができて良かったです。

このように、過去の自分のコメントを確認したり、学習内容を思い出すきっかけとして見る学生がいたようです。どのように学習を辿ってきたのかがわかるのは、自分自身の学びを自覚することになるのでよかったのではと思います。

教員とのコミュニケーション

大福帳では、学生がコメントを書くだけでなく教員も返事を書きます。そのやり取りに対する記述が2件見られました。

  • 全体の授業内で発言するのがあまり得意でなく、大福帳で先生とやりとりができたのはとても良かったです。
  • メリットとしては、毎回フィードバックをもらえる

大福帳は、学生と教員との個人どうしのやり取りになるため、授業中に質問できなかった学生が大福帳を使って質問したり、意見を述べることが可能です。また、コメントや質問に対する返事を書くことは、フィードバックを与えることになります。間違った理解をしていると思ったら返事の中で補足説明を行うこともあります。このように学生と教員とのコミュニケーションを行えるのは、やはり大福帳の大きな特徴です。学生もそれを実感していたようです。

大福帳の設問内容

今回運用した大福帳では、下の画像のように「新しく知ったこと」、「質問、もっと知りたいこと、そのほかコメント」の2つについて、毎回学生が記入していました。これについて、下記のような記述が7件見られました。

  • 教材作りに入ってからは新しく何かを学ぶというより作業が中心で大福帳に書く内容が少し困った。
  • 作業のパートなどで特に新しいことが起こらないときは書くことに困った。

大福帳を運用した授業では、授業の後半はグループでの議論や作業が中心になります。そのため、「新しく知ったこと」という質問に戸惑う学生が多くいたようです。もちろん、作業をする中で何かを新しく知ることもあると思いますが、そうでない場合が多かったということになります。

どのような設問にするかは要検討です。

提出の手間と操作性

今回の大福帳は、Google ClassroomとGoogleスプレッドシートを用いて運用しました。大福帳提出の手間や操作性について、4件の記述がありました。たとえば、下記のような記述です。

  • ファイルを毎回提出するのは若干手間に感じた。
  • 単純にスプレッドシートへの入力がしにくかったというのはありました

提出の際にGoogle Drivemのファイルを探す手間や、スプレッドシートに慣れていないといった点が操作性の課題として挙げられました。一方で下記のような記述もありました。

マイドライブから提出することに慣れると、スマホからも提出できたので便利だった。

ファイルの選択といった操作に慣れると、記入や提出が容易になるようです。

スケジュール

提出までの期間について、下記の1件の記述がありました。

もう少し猶予があると夜型の人間としては嬉しい。

この授業では、授業が水曜、大福帳の提出締切を金曜にしていました。この期間が短いという指摘です。これについては、締切まで時間があれば良い/悪いという問題でもないように思えます。教員としては授業の内容を忘れぬうちに、なるべく早くふり返りをして欲しいという想いもあります。難しいところです。

運用の改善

学生からのフィードバックを受け、運用を改善すべく、2021年度Aセメスターに開講する同一授業での大福帳の運用を下記のように変更しました。

設問内容

グループでの作業中心になると「新しく知ったこと」への記入が難しくなるとのことでしたので、設問を変更しました。

具体的には、「新しく知ったこと」を、「新しく知ったこと、作業のみの場合は その日やったことや感想」という設問に変更し、作業のみ行った授業回でも、学生自身が何をしたのかという、自身の経験をふり返られるようにしました。まだ作業のみの授業回はないので、この変更により戸惑いがなくなるかどうかはわかりません。今学期も学生に感想を求め、検証してみたいと思います。

提出方法

ファイルを探す手間や、スプレッドシートの操作性といった課題が挙げられました。スプレッドシートでの運用から、エクセルファイルの配布での運用に変更しました。

第1回授業時に、エクセルファイルで作成した大福帳のテンプレートを、Google Classroomの「課題」で「全員にコピーを作成」で学生に配布し、記入、提出してもらいます。ファイルへの記入については、

配布したエクセルファイルをGoogleスプレッドシートで編集してもよいし、ファイルをダウンロードしてパソコンで記入してからファイルをアップロードして提出でもOK

と学生に教示して、学生自身のやりやすい方法で記入・提出してもらうことにしました。この方法についても、学生に意見を聞いてみたいと思います。

おわりに

今回は、一学期間運用した大福帳について、学生の感想をもとに変更した内容を紹介しました。この変更が本当に「改善」となったのかどうかは、現時点ではまだわかりません。また学生に感想を尋ね、運用が改善されたのかどうかを確かめたいと思います。