「国際紛争ケースブックをつくろう」(2022年度Aセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「国際紛争ケースブックをつくろう」(2022年度Aセメスター)の授業の様子を紹介します。2020年度以来開講しており今回が3度目の開講となりましたが、受講者は12名(1年生7名、2年生2名、3年生2名、4年生1名)でした。

担当教員:中村長史(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構)
担当TA:八尾佳凛(教養学部教養学科国際関係論コース)

1.授業概要

国際社会で生じる問題は、自然現象ではなく社会現象である以上、一人一人の力によっ てわずかながらでも良くすることもできるし、さらに悪くしてしまうこともあります。本学の学生には、この点を意識し、自分の頭で国際問題の解決策を考えられるようになってほしいと考えています。

そこで、この授業では、複数の国際紛争の経緯や構図、原因等について調査し、最終的にケースブックを作成することを目指しました。その過程で、ある国際紛争に対する見方は決して一様ではないことに気づき、できる限り客観的に各紛争を捉えるための方法を習得することを期待しました。

2.授業の目的・到達目標

目的
本講義で学んだ国際紛争の経緯や構図、原因等に関する知識を使いこなして、国際紛争の発生や激化を防ぐ策を自分の頭で考えられるようになる。

到達目標
①国際紛争に関する資料・文献を適切に収集できる【成果物で評価】
②国際紛争の経緯を説明できる【成果物で評価】
③国際紛争の構図を説明できる【成果物で評価】
④国際紛争が発生・激化の原因を説明できる【成果物で評価】
⑤国際紛争の発生・激化を防ぐ策について、選択肢を複数挙げて⽐較衡量したうえで、妥当と考えられるものを説得的に示すことができる【成果物で評価】

3.授業の流れ

授業スケジュール

ガイダンスーケースブックづくりから学べること(第1回)

国際紛争に関するケースブックをクラス全体でつくることで学べることを考えました。担当する紛争の5W1H、すなわち主体(who)、争点(why)、時期区分(when)、民族・宗教・政治体制・経済状況(where)、当事者・第三者の行動(what&how)について正確に理解するために複数の文献・資料にあたって丁寧に情報収集をするのはもちろんのこと、他の紛争を担当するクラスメイトとの意見交換を通じて、紛争間の関係性や前例が後例に与える影響についても学べることを確認しました。

ケースブックの改訂(第2回~第6回)

いきなりケースブックをゼロから作ることは難しいので、まずは練習として、昨年度までの受講生が作成したケースブックの改訂から始めることにしました。ソマリア、ルワンダ、ボスニア、アフガニスタンの4つの紛争を扱うグループに分かれ、グループ内・グループ間のディスカッション、教員・TAからのフィードバックを繰り返し、ケースブックの改訂を進めていきました。第6回では、グループごとに、その最終成果を報告しました。なお、第2回では、紛争の原因について、理論的な知見を学びました。

ケースブックの作成(第7回~第12回)

改訂作業で学んだことを踏まえて、ケースブックをゼロから作る段階へと入っていきました。イラク、東ティモール、シリア、ミャンマーの4つの紛争を扱う2・3人のグループに分かれ、グループ内・グループ間のディスカッション、教員・TAからのフィードバックを繰り返し、その最終成果を第12回で報告しました。改訂作業の段階に比べて、事例(紛争)間の関係にも目を向けるグループが多くなるなど、確かな成長が感じられました。なお、第7回では、紛争の防止策(平和政策)について、理論的な知見を学びました。

まとめーケースブックづくりから学んだこと(第13回)

各自がケースブックづくりから学んだことについてふりかえりました。また、来セメスター以降のケースブックの授業をよりよくしていくための方法を検討しました。

4.受講者の感想

  • 前後に起こった異なる紛争間の関係を学ぶことができて印象深かった。大局的な視点・細かい視点を両方持ち合わせてバランス感覚を持ってまとめることが重要だと感じた。個人的には時代背景であったり、前後の紛争とのつながりといった大きな視点でものを捉えるのが好きで、どちらかというと細かい点は見逃しがちであるため、自分の思考のくせを知ることができ大きな発見になったと思う。
  • 紛争を考えるとき、どんなに複雑な紛争を考える上でも、5W1Hに立ち返ることで整理することができることを学んだ。
  • 紛争の分析の手法(5W1H)を今後も活用できると感じました。
  • 担当した紛争について周囲の人に説明を行う上で具体例を挙げながら詳細に述べられるほど学べたので人生の経験としてためになった。
  • ミクロレベルから多面的に把握するために、今後は社会心理的な側面(憎悪の増長など)を勉強したい。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史)
dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp