「未来の学びを考える」(2021年度Aセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「未来の学びを考える」(2021年度Aセメスター)の授業の様子を紹介します。受講者は14名(1年生5名、2年生6名、3年生3名)でした。

担当教員:中澤明子(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構)

授業の概要

小学校から大学まで、教育・学習を取り巻く状況は日々変化しています。2000年以降、大学では「アクティブラーニング」や「国際化」などの取り組みが多く行われるようになりました。また初等中等教育(小学・中学・高等学校)でも、「アクティブラーニング」や「GIGAスクール構想」などの取り組みが行われています。それでは、未来の学びはどうなるのでしょうか。

この授業では、「未来の学び(10年後を想定)がどうなるか」について、教育・学習の過去や現在の状況を理解した上で自分なりに考えます。そのために、教育・学習の理論やトピックや、ゲスト講義による教育・学習の事例を学んだ後、自身の教育・学習に関する経験をふり返り、グループでの議論と発表を行いました。

また、第1回から第8回まではオンライン授業、第9回から第13回は対面授業で実施しました。

授業の目的・目標

目的は、本授業の目的は、教育・学習について過去や現在の状況を理解した上で、未来の学びがどうなるかを自分なりに考えることです。

目標は以下の4点でした。

  1. 教育・学習に関する理論や定義について説明できる
  2. 過去や現在の教育・学習に関するトピックや事例を列挙できる
  3. 自分の教育・学習経験を、理論や事例と関連づけて示せる
  4. 教育・学習の理論や事例を踏まえ、自分なりの未来(10年後を想定)の学びのあり方を示せる

授業の流れ

本授業は、大きく四つの内容・活動から構成されています。

1. 未来を考える手がかり:教育・学習の理論やトピック

未来の学びを考える手がかりとして、教育・学習の理論やトピックについて学びます。

第2回から第5回の授業では、ジグソー法を用いて教育・学習の理論やトピックへの理解を深めました。扱った理論・トピックは、学習観、空間・活動・共同体、新しい能力、アクティブラーニング、学校でのテクノロジ活用、オンライン環境での学び、ノンフォーマルな学び、大人の学びといったものでした。

ジグソー法を用いた授業のやり方については、こちらの記事をご覧ください。

2. 未来を考える手がかり:学びの事例

未来の学びを考える手がかりとして、教育・学習の事例について学びます。

第6回から第8回の授業では、ゲスト講師をお招きし、学びの事例について講義していただきました。

第6回は西武台新座中学校の河野芳人教諭によるアクティブラーニングやテクノロジ活用の事例、第7回は森秀樹 昭和女子大学准教授によるワークショップやプログラミング教育の事例、第8回は福山佑樹 関西学院大学准教授によるゲーム学習の理論と実際についてご講義いただきました。

3. 未来を考える手がかり:自身の経験をふり返る

第9回の授業では、自身の教育・学習に関する経験を、ブロックを使って可視化して相互に説明した後、それまでの授業で扱ったトピックや事例との関連づけを行いました。

本授業では、未来の学びを考えるヒントは、過去や現在の事例や自身の経験、理論やトピックにあると考えます。そこで、自分自身がどのような経験をしてのかを思い出し、その経験を本授業で学んだ内容と関連づけ、経験を抽象的に捉える活動を行いました。この詳細は、こちらの記事にまとめましたのでご覧ください。

4. 未来の学びはどうなるのか:議論と最終発表

第10回から第13回の授業は、未来の学びに関するグループでの議論と発表を行いました。

誰の学びについて考えたいかという希望に応じて受講者を4つのグループに分け、グループごとに未来の学びについて議論してもらい、その内容を最後に発表してもらいました。

第10回から第12回の授業では、グループで議論した後、ほかのグループとの進捗共有を行いました。そこでも意見交換が行われ、一つの未来の学びについて多様な視点から議論できるように工夫しました。

また、最終発表の形式は自由としました。スライドを使ったプレゼンテーションでもいいですし、スキット(劇)やイラストでもよいのです。ただし、「どこで、誰が、何を、どうやって学んでいるのか」と「社会状況や背景」という要素を内容に含めること、時間は3〜5分程度という条件を付しました。

最終発表では、スライドによるプレゼンテーション、スキットでの発表がありました。発表の内容は、中学校の授業における個別最適化、10年後の高校における総合的な探究の時間、高校生や様々な属性の大学生や社会人の学校以外の場での学び、10年後の大学といったものでした。

そして、発表後には、13回の授業を通じた自分自身の学びを大福帳を通してふり返りました。

受講者の感想

  • 最後に大福帳を振り返ってみて、自分がどんなことに興味を持っていたのか、それに対して今の自分がどういう考えや答えを出しているのかを考えるのがすごく面白かったです。日記をつけるのにも近いような感覚でした。
  • 毎週書くときは面倒くさいなあと思うことも正直ありましたが、今振り返ってめちゃくちゃいいなと思いました。自分でやるとなると継続性が怪しいので、全授業で大福帳システムがあればなあ!と思いました。
  • 大福帳を書くことによって授業の復習をする必要が生まれ、各週の内容の整理が可能になる。また、授業で聞くことができなかった質問や後に生まれた疑問点などを教員に遠慮なく聞ける機会としての意義があったと思う。感想を書くにあたって自身の経験と結びつけることができたこともメリットの一つであった。デメリットとしてはgoogledocsがタブレット系端末での使い勝手がよくなく、記入の際はパソコンを使うので問題ないがフィードバックを閲覧したいときに毎度パソコンを立ち上げる必要があった。
  • 自分の2Aで取っている授業の中で、他にもディスカッションを要求する授業がある一方で、これが一番受講者と活発な議論を交わせた授業でした。その理由を考えるに、「ジグソー法を用いることによって各人が半ば強制的に役割を与えられ、発言する必要性があったこと 」、「対面でのディスカッションやグループ発表が設けられていたこと」によって、目標に向けて協力し合うベースが作られていたこと などがあるかなと思いました。 主体的に取り組めたおかげで、授業内容もよく身についたと思います。
  • 大学に入って初めて講義形式ではない授業を受けられたことがとても印象的でした。またKALSの存在も知らなかったので、大学内にこういった施設があることも知ることができました。

問い合わせ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中澤明子)
dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp