全学自由研究ゼミナール「アクティブラーニングで未来の学びを考える」

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全学自由研究ゼミナール
「アクティブラーニングで未来の学びを考える」

アクティブラーニング部門では2014年度より全学自由研究ゼミナール「アクティブラーニングで未来の学びを考える」を開講しています。
この授業では、アクティブラーニング手法を用いた授業を展開しており、前半の授業では学習観や背景理論、教材・実践について概観し、それらを踏まえて最終的にはグループで「未来の学び」を実践して貰うことで、「学び」についての考えを深めることを目指しています。
各回の授業概要を表1に示しました。
本講では、前半で行ういくつかの講義の流れ、ゲスト講義、学生たちの実践、学生の反応の4つの観点からこの授業の概要を説明します。

表1 「ALで未来の学びを考える」授業概要

タイトル(授業手法)
1 ガイダンス
2 学びとは何か?(ミニワークショップ/講義)
3 3つの学習観(ジグソー法)
4 ICTを用いた学び(講義/教材体験)
5 新しい能力と経験学習(講義/教材体験)
6 学習空間・活動・共同体(ジグソー法)
7 最先端の学びを調べよう!(発表)
8  ゲスト講義?(詳細は後述)
9 ゲスト講義?(詳細は後述)
10 未来の学びを考えよう(グループワーク)
11 ワークショップの準備(グループワーク)
12 未来の学びの実践(ワークショップ)
13 リフレクション(グループワーク)

講義の流れ

講義のうち2回では、ジグソー法と呼ばれる協調学習手法を用いた授業を実施しています。
ジグソー法では、まず学生が「専門家グループ」を組み、グループごとに決められたトピックについて学習した後に、それぞれトピックを学習した「専門家」が1人ずつ集まる「ジグソーグループ」を作成します。
ジグソーグループの中で、それぞれの学生が自分が学習した内容の「専門家」として、他のメンバーに説明を行います。
そして、最後にグループで知識の全体像についてディスカッションを行います。ジグソー法は、複数のトピックを学習し、教え合うことで内容に関する深い理解を促すことが出来る手法です。
講義では「学習観」と「空間・活動・共同体」をテーマにし、「学習観」の講義では学生を「行動主義」「認知主義」「社会構成主義」の3つの専門家グループに分けて学習を行い、それぞれの内容をジグソーグループで説明し合った後、3つの主義の歴史的変遷や関係性についてディスカッションする授業を行いました。
学生にとって、自分が学んだことを他者に説明する活動は刺激的だったようで、集中して学習できたという意見や、もっと上手く説明できるようになりたい、などの感想がコメントシートに書かれていました。

ゲスト講義

授業では毎期1?2名程度、先進的な学びの実践者の方をお呼びするゲスト講義を実施しています。
2015年度Sセメスターでは、NPO法人 Collable代表の山田小百合さんをお呼びし、インクルーシブワークショップを実施して頂きました。
Collableは「多様性を歓迎する社会の創造」をビジョンとし、障害のある人もない人も「ともに」創造し活動するコミュニティづくりを支援することを目指すNPOです。
授業では、目の見えない人にとって自分を表現する「名刺」とはどのようなものかを考えて制作する「見えない名刺をデザインするワークショップ」を実施して頂きました。
普段、名前や肩書きが載っているものと何となく思っている名刺ですが、目が見えない人に自分のことを伝えると考えると、「出身地の形」を紙を切ってデザインする学生や、「所属サークルで使う道具」を表現する学生など多様な観点から名刺作成が行われ、お互いについての理解も深まりましたし、普段当たり前に思っていることを疑う視野が養われました(図1)。

図1 ワークショップの様子

学生たちの実践

授業の後半では、学生達に「自分たちが実現したい未来の学び」を考えて実践する活動を行って貰っています。
これは普段は学習者の視点だけしか持っていない学生に、授業者の視点からも「未来の学び」について考えてもらうことを目的にしています。
2014年度に行われた学生達の実践例を1つご紹介します。
あるグループでは、小学校の社会の授業に「ジグソー法」を取り入れるとどのようなことが出来るのかを考え、「ジグソー法とすごろく」を融合させた実践を考えました。
これはまずジグソー法で織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の3人を学んだ後に、それぞれに関するすごろくを作成し、お互いが作ったものを遊ぶことで、楽しみながら担当しなかった武将に関する知識を得ることが出来るというものです(図2)。

図2 学生の成果物

1,2年生が2週間ほどで設計したこともあり、ファシリテーションなどに課題もある実践でしたが、初めて多人数になにかを教えるという経験をした学生も多く、得るものが多かった様子でした。

学生たちの反応

受講した学生たちの反応としては毎学期良いものが得られています。
コメントシートに記載されている、授業で特に身についたとしている能力や意識としては、「教育に対する興味・関心」、「(アクティブラーニングを含む)学習に対する知識や意欲」、「他者とディスカッションする能力」などが多く見られました。
授業者としても、回が進むごとにグループでのディスカッションは内容が濃いものになっており、また初回ではほとんど話せなかった学生の発言量も徐々に増えていくのが感じられ、受講生の反応と同様のことを効果として感じました。
授業で活用したジグソー法などの手法に関しては昨年度部門で作成した「+15 minutes」という冊子に実施方法を詳しくまとめました。
「ダウンロード」ページからダウンロードできるほか、KALSにて冊子もお配りしておりますので、ご興味がおありの方はアクティブラーニング部門までご連絡ください。

(福山佑樹)