学生との対話を実現(ミニッツペーパーの実践)

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実践者

佐々田槙子先生(数理科学研究科)

科目名

数学

人数

100名

授業に関する基本情報

数学I は、学部1・2 年の文系生が受講する数学の授業です。社会科学に関連する題材を織り交ぜ、数学的な概念を把握することに重点をおいています。

特に私の授業では、私が講義するだけではなく、数学的な概念の理解につながるような課題に学生が取り組む機会を設けています。そうすることで、内容の理解に加えて、学生の集中力を維持する効果をねらっています。

実践している手法の具体的な内容

ミニッツペーパーには、以下の3 項目と授業内で取り組む課題の回答欄を設けています。

・今日新しく学んだことで特に印象に残った点を挙げてください
・今日の授業でわからなかったところや、疑問点があれば書いてください
・今日の授業の感想を書いてください

授業では、最初に小テストを実施します(1)。
次に、前回のミニッツペーパーの回答をもとに、理解が不足しているところの補足をしたり、印象的なコメントを共有したりしています(2)。その際、私がピックアップした回答と私のコメントが書かれた紙も渡しています。
そして、講義の間に課題を設けます(3~5)。
最後にミニッツペーパーを書いてもらいます(6)。

表 授業の流れ

番号 内容 所要時間
1 小テストを実施する 10分
2 前回のミニッツペーパーの内容を元に前回の補足をする 10分
3 数学のトピックに関して講義する 40分
4 内容を理解するための課題をいれる 10分
5 数学のトピックに関して講義する 30分
6 ミニッツペーパーを書いてもらう 5分

その手法を実践して良かったこと

ミニッツペーパーを通して、学生が考えていることを把握できるのが良かったです。個別の理解度や疑問に加えて、全体としてどのぐらい理解してくれているのかも把握できるところが良かったです。普通は、直接質問に来る学生が持っている疑問が、学生の多くが持っているものなのか、その人特有のものなのかがわかりませんが、ミニッツペーパーを用いていると、その疑問をもっている学生の割合がわかるので、学生全体の理解度を把握することができます。

多くの学生がつまずいているところを把握できると、次回の授業で補足できますし、面白かったというコメントや数学の本質的なところを理解してくれたことがわかるコメントを見ると、授業準備のモチベーションがあがります。

授業中に手をあげて質問するのは勇気がない、という学生も、ミニッツペーパーには疑問を率直に書いてくれるため、コミュニケーションツールとして有効だと思いました。

また、学生のコメントを紙にまとめて共有しているのですが、そうすることで学生同士の疑似ディスカッションが実現できているように感じます。

その手法を実践して感じたデメリットや難しさ

学生のコメントを紙にまとめる時間はデメリットになりえます。私の場合、ミニッツペーパーをざっと読んで、ピックアップしたいコメントに印やコメントをつけて、秘書の方に電子ファイルでまとめてもらっています。そのため、コメントにかける実質的な時間は1 時間ほどで、負担はあまり大きくありません。実際、自分でまとめるとなると、ここまで対応できないかもしれません。

また、「全然わからない」といった漠然としたコメントがある場合、何がわからないのかがわからないため、反応に困ってしまう時があります。そこで、「テイラー展開の~~という部分がわからない」など、学生にも具体的な指摘をしてもらえるように促せばよかったかもしれません。

これから実践する先生へのアドバイス

難しかったところでもお伝えしましたが、「全然わからない」など漠然とした疑問だと、対応が難しくなるため、具体的な指摘をしてもらうように学生にお願いするのが良いかもしれません。

また、いかにミニッツペーパーに対してリアクションするかがポイントになると思います。私は、授業冒頭に行う前回授業の補足やコメントをまとめた紙を返すことによって、リアクションをしていました。教員からのリアクションがないと、ミニッツペーパーを書いても仕方ない、と書いてくれなくなる可能性、さらに無視されたと感じて、かえって不信感につながる可能性があるように思います。

全体としては、導入してよかったと思っています。学生が考えていることもわかりますし、授業準備のモチベーションも上がりました。また、大人数を相手にしていると学生の考えを聞く機会が少ないですが、ミニッツペーパーを用いることで、教員と学生、あるいは学生同士のコミュニケーションを実現できました。

(吉田塁)