学生によるレポートの相互添削

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学生によるレポートの相互添削(ピアレビューの実践)

実践者

ジョンマニナン先生(グローバルコミュニケーション研究センター)

科目名

ALESS (Active Learning of English for Science Students)

人数

15名程度

授業に関する基本情報

ALESS(Active Learning of English for Science Students)プログラムは、学術論文の作成法の基礎を学ぶ理科生(理科I、II、III 類)1年生を対象としたネイティヴ・スピーカーによる少人数制の必修科目です(2008 年4 月開始)。

受講生は、自らが考案・実施する科学実験をテーマに、IMRaD(Introduction(序章)、Methods(方法)、Results(結果)、Discussion(考察))という国際的な標準形式にそって論文を執筆します。

実践している手法の具体的な内容

ピア・レビューは、ALESS を担当するようになってから、2 年半ほど実施しています。論文の各パート(序章、方法、結果、考察と要旨)のドラフトを執筆した後、そしてすべてのパートをまとめた論文が完成した後に実施しています。

たとえば、序章のパートでは、教員は、まず最初に序章で提示すべき事項や気をつけるべき点などを説明し(1)、次の週までに学んだことをふまえて序章のドラフトを準備してくるように学生に指示します(2)。

次週では、まず序章のドラフトを評価するためのいくつかの観点を示したチェックリストを学生に提示します。このチェックリストは、前の週に学んだ内容をもとにしているため、説明には多くの時間を必要としません(3)。

次に、ピア・レビューを行うペアを作らせます(4)。学生はペアとなった相手のドラフトについて、チェックリストを用いてレビューします。不足情報などがあれば、ドラフトやチェックリストの自由記述欄にその内容を記入します。この間、教員は巡回して、学生のドラフトとレビューの内容をチェックし、漏れなどがあれば補足します(5)。

最後に、ペアとなった学生同士でレビュー結果を交互に口頭で伝えます(6)。

この一連の流れを、方法、結果、考察についても繰り返し、最後にすべてのパートをまとめた論文(フルペーパー)を執筆します(7)。学生はこの論文についてもピアレビュー(匿名)をおこない、このピアレビュー自体が、成績評価の対象になります(評価の10% を占める)。

学生はピアレビューを受けて修正した各パートのドラフトと、フルペーパーを教員に提出します。教員はこれらに加え、フルペーパーに対するピアレビューの内容を授業時間外でチェックします。

授業の流れ

番号 内容 所要時間
1 (1回目の授業)序章で提示すべき事項や気をつけるべき点などを説明する -
2 (2回目の授業まで)学生が学んだことをふまえて序章のドラフトを作成する -
3 (2回目の授業)チェックリストについて説明する 5分
4 (2回目の授業)ペアを作る 3分
5 (2回目の授業)チェックリストを用いてドラフトをピアレビューする。教員は机間巡視をする。 30分
6 (2回目の授業)レビュー結果を交互に伝える 15分
7 (3回目以降の授業)方法、結果、考察の執筆にも同様の方法を用いる -

その手法を実践して良かったこと

レビューを受ける学生は、自分が気づかない点を指摘してもらえるというメリットがあり、レビューする学生は、レビューを通じて評価者の視点を身につけ、自分の間違いにも気づけるようになるというメリットがあります。

ピアレビューを受ける前と受けた後とでは、論文の質が明らかに異なり、内容が充実し、より良くなっているのがわかりました。

その手法を実践して感じたデメリットや難しさ

ピアレビューが適切に行われているかを確認するためには、多くの時間が必要となり、教員の負担になります。一方、各パートのドラフトのレビューを学生が行うことによって、初歩的なミスを教員が指摘しなくてよくなり、教員の負担が軽減された部分もあります。

英語力が十分でない学生とペアになった場合、学生がピアレビューのコメントに満足しないこともあります。学生の満足度を下げないためにも、ピアレビューの相手を変えたり、教員からフィードバックしたりしています。

これから実践する先生へのアドバイス

批判に慣れていない学生が安心してピア・レビューに取り組めるように、協力的な雰囲気をつくったり、批判は、論文の質を高めるための批判であることをあらかじめ学生に伝えておいたりすることは大切です。

ピア・レビューの結果を自由記述形式でコメントできると、批判的思考が刺激され、学生はより主体的にピア・レビューに取り組むようになります(評価項目を満たしているかどうかを Yes/No の選択形式で回答させるチェックリストだけでは十分な刺激になりません)。これによって、評価者としての視点が身につき、結果的に、レポートの質も高まります。

(小原優貴、吉田塁)